「うちの子、発達障がいがありますが通うことはできますか?」

保護者の方からそのようにご相談頂くことがよくあります。

当教室ではよほどのことがない限り、まずはやってみましょうという回答をさせて頂きます。

そして今日は、ある生徒さんのお話をご紹介します。

子どものペースを最優先する保護者様

彼が当教室に入会してくれたのは、2年前のことです。

保護者の方から事前に「軽度の発達障がいがありまして」と伺っていました。

学年の割には少し幼いかな、という印象はありましたが、何より留意するべき点は

「教材に書いてある通りに読んで進めるということが、どうも難しそう」だということでした。

当教室では基本的に、レベル別の教材に沿って、教材に書いてある通りに自分でも作ってみるというスタイルです。

でも、彼にとっては、それがとてもハードルの高いことのように見えました。

そこで、保護者の方と相談させていただきました。

「通常は教材に沿って進めるのですが、もしよろしければ、まずは本人が作りたいもの、表現したいものを優先して進めてみませんか?」

保護者の方からも、

「そのようにして頂けるとありがたいです。本人が楽しく、自分のペースでできればと思います。」

と言ってくださいました。

こうして、彼の「作りたいもの」を「自分のペースで取り組む」という方針で通って頂くことになりました。

マイクラで「作りたいもの」に没頭する

彼は、マインクラフトの世界で、とにかく「作りたいもの」を作り続けました。

教材に書いてあることを読んで進める、ということは苦手でも、自分の中で思い描いたことを表現することはできる。

彼にとって、マイクラは自分を表現できる大切な場所だったのだと思います。

あれから2年。

久しぶりに彼の姿を見たとき、私は本当に驚きました。

まず、タイピングです。驚くほど速くなっていました。

本人に聞くと、「家でも学校でも、タイピングの練習なんてしてないよ」とのこと。

でも、理由は明らかでした。

彼は、マイクラで「作りたいもの」があるから、自然とキーボードを叩き続けていたのです。好きなことをしているうちに、いつの間にか身についていたのです。

次に驚いたのは、教材を見ながら自力で入力して進められるようになっていたことです。

2年前、あれほど難しかった「教材を読んで進める」ことが、今では自分でできるようになっていました。

そして、「幼さ」が「愛嬌」に

もちろんご家庭での熱心なサポートや、年齢的に成長してきたこともあるかと思います。

でも、私が最も心を動かされたのは、別のことでした。

2年前、「学年の割には少し幼いかな」と感じていたあの特性が、今では「楽しく会話できる能力」として花開いていたのです。

初めて会った子にも、笑顔で手を振る。屈託のない明るさで話しかける。

その愛嬌に、周りの子どもたちも自然と笑顔になっていました。

「あ、この子は、この愛嬌からくるキャラクターとコミュニケーション力で、やっていける」

そう強く感じた瞬間でした。

「幼い」と思っていた特性は、決して「直すべきもの」ではなかったのです。

それは、彼の大切な「個性」であり、他の誰にも真似できない「強み」だったのです。

彼から教えてもらったこと

この経験を通じて、私は彼から大切なことを教えてもらいました。

「周りが本人の特性を理解して、本人のペースで、暖かく見守ること」

これが何より大切なのだということです。

実際、少し前には「最近疲れているみたいなので、少し休会します」と連絡を頂いて、途中、休まれていたこともあります。

また久々に保護者の方とお会いした際も、最近教室に行けないこともよくあるんです、と話していたこともあります。

それでも、本人の負担にならないペースで、通い続けて頂いています。

私も自分の子供たちを習い事に行かせているので、行けなかったり休みが続いたりすると

「月謝が消えていくー!」と考えてしまいがちです^^;

それでもこの子の保護者の方のように、本人のペースで、暖かく支えられる親でありたいなと思います。

保護者の皆様へ

世の中には、いろいろな仕事があります。いろいろな生き方があります。

人と話すのが好きで、笑顔で接することができれば、それは何にも代えがたい武器になります。

勉強が得意でなくても、デジタルツールを使えば、少し便利に生きられます。

大切なのは、「苦手を直すこと」ではなく、「好きを見つけること」「得意を伸ばすこと」

そして、その子が持っている「個性」を、否定するのではなく、活かしていくこと。

彼が、そう教えてくれました。

親という立場だと、どうしても「できないこと」が目についてしまう。

「周りの子との違い」が気になってしまう。

でも、お子さんの「できないこと」を数えるのではなく、「好きなこと」を見つけてあげてください。

そして、その「好き」を思い切り伸ばせる環境を、探してあげてください。

それがマインクラフトでも、絵を描くことでも、音楽でも、何でもいいのです。

子どもは、「好き」を見つけたとき、驚くほどの力を発揮します。

そして、その「好き」を通じて、必要な能力を自然と身につけていきます。

発達障がいは、「遅れ」ではありません。「個性」です。

そして、すべての子どもには、無限の可能性があります。

大切なのは、その子なりの「好き」を見つけ、その子なりの「得意」を伸ばせる環境があるかどうか。

焦らずに、お子さんの「好きなこと」「得意なこと」に目を向けてあげてください。

そして、その芽を大切に育ててあげてください。

きっと、数年後には、今では想像もできないような成長を、お子さんは見せてくれるはずです。

彼が私に教えてくれたように。